当院の肛門外来では、開院以来三大肛門疾患と呼ばれる痔核、痔ろう、裂肛を主に扱ってまいりました。その治療は、当初手術療法のみであったものが、日々改良が加えられることによって個々の患者さん、疾患にあったオーダーメードの治療が選択できるようになってきました。 痔核に対する治療法もそのひとつですが、いわゆる「切らずに治す治療」というものが登場しました。これはALTA硬化療法(ジオン注射)というものなのですが、当院でもこれを採用し一年が経過しましたのでここでその一部をご紹介いたします。
肛門の病気のなかでもっとも多いもので、 出血、痛み、腫れ、脱出などで気づきます。
原因は直腸の出口の粘膜などを支えている組織が加齢とともに弱くなってくることが大きな原因ではないかと考えられています。
直腸、肛門のある境界(歯状線と呼びます)より直腸側にあるか(内痔核)、肛門縁側にあるか(外痔核)、で分けていますが、両方にまたがることが多いようです。
痔核の場所や程度によって治療方法は異なりますが、基本的には、「肛門部を清潔に保つこと」「便の状態を改善すること」にあわせて薬での治療が優先されることが多いようです。
従来からある所謂手術療法として結さつ切除術が代表的でありますが、近年さまざまな方法が考案されてきています。
・ゴム輪結さつ療法
・PPH(procedure for prolapse and hemorrhoids)
・ALTAによる硬化療法(ジオン注) など
今回はこのなかで最近特に手ごたえを感じるALTAによる硬化療法(ジオン注)について触れます。
硫酸アルミニウム・カリウム水和物およびタンニン酸を主成分とする痔核硬化剤を痔核内と痔核周囲に局所注射する新しい硬化療法です。
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ジオン注の四段階注入療法が平成17年に厚生省の保険認可を受け、従来の痔核切除法やPPH法に比べて体への負担や入院期間の面から大変優れていることから採用する施設が急速に広がっております。
基本的には外痔核には適応がなく、内痔核がよい適応となります。ジオン注は内痔核に対する硬化療法であり、外痔核・裂肛・痔瘻が主体の患者様ではジオン注の適応とはなりません。
前立腺疾患の治療中の方は、前立腺が肛門・直腸のすぐ前のため慎重な対応が必要です。特に、前立腺癌に対して放射線治療を行った方は現在のところジオン注は適応外とされております。
腎機能低下が高度な方や、透析中の方も慎重な対応が必要とされます。 妊娠中およびその可能性のある方および授乳中の方は、当院では本治療の適応外とさせて頂いております。
脳梗塞や狭心症等で抗血小板剤や抗凝固剤を内服中の方は本治療の前後1週間ほど中止して頂きますので必ず医師に申し出下さい。
麻酔は主に仙骨硬膜外麻酔により肛門周囲部のみの麻酔としており術後1-2時間程度の安静の後に歩行や食事も可能です。
(症状によって腰椎麻酔や局所麻酔等に変更もあります)
入院期間は手術日前後1日を含め3日間としております。仕事等で多忙の方は日曜日入院、月曜日手術、火曜日退院の正味2日間の休業で対応可能です。費用は健康保険3割負担の方で入院・手術費用合計で4〜5万円程度です。
以上のように 当院では平成21年度より内痔核に対するジオン注による硬化療法を開始しており、脱出や出血を伴う内痔核に対して従来の痔核切除法およびPPH法とほぼ同等の効果を得ていることから、さらに成績の向上を目指していきたいと思っております。
また、リンクサイト いーじーnet には、痔について詳しい説明が載っていますので興味のある方は是非ご覧下さい。