腹腔鏡下ヘルニアセンターについて

はじめに

従来、すべての胃、大腸、肝臓、胆のう、すい臓などの消化器の手術は、腹部に 30cmほどの大きな切開が必要でした。また安全性を確保する意味でも外科手術においては大きな創をあけてしっかり観察し、十分な手術をすることが最も重要と考えられてきました。
しかし近年、医療技術、機器の進歩によって、腹腔鏡というおなかの中を観察するカメラを併用することによって小さな創でも、安全で細かな手術ができるようにもなってきました。それに伴い以前は炎症のない胆嚢摘出術に限られていた腹腔鏡の手技が、患者さんによっては、炎症を伴った胆嚢の手術をはじめ食道・胃・大腸といった消化管の手術にまで応用され、より小さな傷口で体に負担をかけずに手術ができるようになってきたのです。

なぜ、腹腔鏡下手術がいいの?

良いとされる点をいくつか挙げてみますと、

  1. 創が小さい。
  2. 術後の痛みが少ない。
  3. 術後の腸の動きはじめるのが早いため、早期に食事を開始できる。
  4. 腸の癒着による腸閉塞の率が低い。
  5. また、カメラを近接することで開腹手術のときに見落とされていた細かいところまで観察でき、より正確な手術が可能になった。

などが、あります。

では、気になる点は?

腹腔鏡下手術は、通常の開腹手術に比べて手術難易度が高い分、手術時間が約1.5倍程度長くなることが多く、またかなり完成された技術となってはいるものの、歴史の長い開腹手術とくらべるとまだ執刀医の技術の差が出やすく、機械も発展途上の部分がないとはいえません。

どのような病気を腹腔鏡で治療するの

当院では、基本的に学会のガイドラインに則った治療方針としています。
胃癌:内視鏡的切除不能の早期胃癌と一部の進行癌が対象です。
大腸癌:内視鏡的切除不能の早期癌や進行大腸癌の一部などすべてほとんどを対象としています。
胆嚢:胆石症、胆嚢ポリープ
虫垂炎、十二指腸潰瘍穿孔などの急性腹症。
その他、横隔膜裂孔ヘルニア、胃粘膜下腫瘍など

ヘルニアについて

そもそもヘルニアとは、体の一部が本来あるべき部位から脱出した状態をいいます。例えば、整形外科で主に診療している病気の一つに、椎体と椎体の間にある椎間板が脱出する『椎間板ヘルニア』という疾患があり、腰痛や下肢の痺れなどを起こすことで有名です。
われわれの外科で主に扱うヘルニアはいわゆる『脱腸』のことで、腹部の筋肉の弱い部分から、腹膜に覆われた腸や卵巣、大網などが脱出しておなかの壁や足の付け根がポッコリと盛り上がった状態のことを指します。
イメージとしては図のようにタイヤのトレッド部(路面と接する部分、人体では筋肉)が弱くなり、中のチューブ(腹膜)が脱出した状態を思い浮かべてみてください。

ヘルニアの種類と症状

主に脱出する場所(立ったときや腹部に力を入れたときに膨らむ場所)によって名前がつけられています。
①足の付け根が盛り上がる→ 内・外ソケイヘルニア、大腿ヘルニア
②「でべそ」になった→ 臍ヘルニア
③昔の手術の傷が膨らむ→ 腹壁瘢痕ヘルニア
などがあります。

治療について

成人の場合の根本的な治療法は手術となります。一旦弱くなりヘルニアを生じた筋肉の壁は、自然に改善することはありません。
基本的には緊急を要さず待機的に治療を行う疾患ですが、押しても元に戻らない場合は嵌頓(カントン)といい、腸閉塞や腸管壊死(腐ってしまうこと)を起こすことがあるため、緊急の処置または手術が必要になることがあります。

手術について

手術は1時間程度の手術であり、当院では通常全身麻酔下で、『腹腔鏡下ヘルニア根治術』を主に行っております。


入院と術後生活

当院では基本的に2泊3日の入院とし、退院後は激しい運動をしなければ、日常生活は通常通りに送っていただけます。入浴(シャワー)も可能です。

このほかにもヘルニアに関して何かご質問がございましたら当院外科医師にご相談ください。

腹腔鏡で治療できないものは?

病態から
胃癌:進行癌に対しての腹腔鏡治療はまだ治療法として確立されていないため原則として開腹手術としています。
大腸癌:腫瘍の大きすぎるもの、癌がほかの臓器に浸潤しているものは基本的に開腹手術で対応しています。
肝臓癌、膵臓癌などに関しては現時点では開腹手術を主としています。
全身状態から
腹腔鏡の手術は腹腔内に炭酸ガスを入れておなかを膨らませて行う手術なのですが、心臓や肺の機能の落ちている方の場合リスクが高くなる場合があります。
また、過去の手術によって高度の癒着が予想される場合には開腹手術のほうが適切であることもあります。

また、当院では腹腔鏡のみで手術を行うことを一番の目的とするのではなく、個々の患者さんが求める最良の結果に近づけるために腹腔鏡を利用することを御理解いただいた上で治療にあたるようにしております。

担当医師
役職 氏名 出身大学 専門
外科医長
腹腔鏡センター長
臼田 磨弥人 山梨大学 医学部 身体障害者判定医(科目:膀胱又は直腸機能障害)
身体障害者判定医(科目:小腸機能障害)

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